1. Takuya Hatomura
    Shortcuts to adiabatic cat-state generation in Bose-Einstein condensates
    arXiv:1709.02676.
    断熱時間発展の加速をBose-Einstein凝縮体における猫状態の生成に応用した。Bose-Einstein凝縮体からなるJosephson結合はLipkin-Meshkov-Glick模型で表すことができる。Lipkin-Meshkov-Glick模型での断熱時間発展の加速は既に知られていたが、臨界点周りでの扱いが一つの問題点であった。本研究では1/N補正を取り入れることにより、自然な断熱時間発展の加速を提案した。結果として、だいたい十倍以上の加速に成功し、量子Fisher情報量の大きさからも十分な猫状態が生成できることがわかった。
  2. Takuya Hatomura, Bernard Barbara, and Seiji Miyashita
    Distribution of eigenstate populations and dissipative beating dynamics in uniaxial single-spin magnets
    arXiv:1704.06466.
    前回の論文[1]に引き続き、量子Stoner-Wohlfarth模型の性質を調べた。
    特に、今回は散乱過程におけるエネルギー固有状態の分布に着目した。一つ目の結果としては、その分布が量子から古典への極限を考えたときにどのように収束していくかを明らかにした。結果として、量子と古典ではその分布のピーク位置が変化せず、有限速度による磁化反転位置のずれとして理解できることがわかった。また、掃引速度が十分に小さいときには、前回発見したギャップ構造の臨界性を反映した振舞いをすることがわかった。
    さらに、前回発見したスピンのうなりの安定性を議論した。その結果、希薄な単スピン磁石であれば観測可能である可能性があることを明らかにした。
    [1] T. Hatomura, B. Barbara, and S. Miyashita, Quantum Stoner-Wohlfarth Model, Phys. Rev. Lett. 116, 037203 (2016).
  3. Takuya Hatomura
    Shortcuts to adiabaticity in the infinite-range Ising model by mean-field counter-diabatic driving
    J. Phys. Soc. Jpn. 86, 094002 (2017).
    全結合Ising模型のcounter-diabatic Hamiltonianを、平均場近似を用いて構成した。このとき、断熱ダイナミクスが実現しているならば状態は常に基底状態であるため、平均場は基底状態による平均として解釈することができる。この平均場counter-diabatic Hamiltonianは局所的な形で書かれているため、実験での実現が期待される。
    また、本研究で構成された平均場counter-diabatic Hamiltonianは、SelsとPolkovnikovによって導入された変分法[1]による局所counter-diabatic Hamiltonianよりも高次の項の寄与を取り入れることができていることがわかった。これは、相関が強い系での変分法の改良の必要性を示す結果でもある。
    [1] D. Sels and A. Polkovnikov, Minimizing irreversible losses in quantum systems by local counter-diabatic driving, arXiv:1607.05687.
  4. Takuya Hatomura, Bernard Barbara, and Seiji Miyashita
    Quantum Stoner-Wohlfarth Model
    Phys. Rev. Lett. 116, 037203 (2016).
    Stoner-Wohlfarth模型と呼ばれる古典スピン模型を量子化し、スピノーダル現象による準安定状態の崩壊を量子力学の立場から調べた。
    古典の場合には、エネルギーの極小点を断熱的に変化することによって「基底状態→準安定状態→不安定化」というプロセスを経る。ところが、量子の場合には、エネルギースペクトル上の(無限小の)ギャップを非断熱的に遷移することによって「基底状態→準安定状態」という変化を起こしていることがわかった。また、準安定状態である間は(確率がほぼ1の)連続的な非断熱遷移を起こしており、古典のスピノーダル点においてギャップが急激に大きくなることによって「準安定状態→不安定化」が起こることがわかった。このとき、状態が通過するギャップの大きさは臨界現象的な振る舞いをすることがわかった。
    さらに、磁化の反転後に特徴的な振動現象を発見した。この振動現象はGaraninらによっても発見されていたが[1]、すべてのスピン成分が同時に振動し、スピンの長さ自身が振動していることを発見したのは本研究が初である。この振動は、エネルギー準位間の振動の「うなり」であることがわかっている。
    [1] D. A. Garanin and R. Schilling, Quantum nonlinear spin switching model, Phys. Rev. B 69, 104412 (2004).